【奇跡のチネリ】
金曜の夜、会社帰りにグリスを購入するため立ち寄った自転車屋さんで、私が生まれた誕生年にイタリアで一台一台ハンドメイドで仕上げられた極上コンディションのヴィンテージロードバイク「cinelli」と巡り会ってしまいました。
残された会社勤めもあとわずか。自分へのご褒美にメチャクチャ高価だけど絶対に買えない額でもない。今どき中古のジムニーだって200万超えなんて当たり前。もしかしてこれは運命的な出逢いなのかも..
いやいや、半世紀以上も前に設計された一切の品質保証も担保されない中古のポンコツ自転車に百万円を投じようとするオマエの思考回路は大丈夫か?
酔狂の極みにも度が過ぎる、目を覚ませ!と緊急地震速報を受信した際の警戒音にも似たアラームが頭の中で鳴り響きます。
それでも金銭感覚が麻痺するぐらい時空を超えたイタリアンカットラグの美しさに圧倒されたワタシ。
こんな時代だからこそ子供のように笑うオトナの姿を子供たちの前で見せなきゃいけない時なのかも知れません。
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しかし私の体躯に合わせるとフレームサイズが二回り大きい為、シートポストが出せず、ハンドルをカラダに近づけるショートステムは美しいフォルムが崩れるので泣く泣く諦めることに..
あっ、デローザのクロモリもある!しかしこれ以上は目の毒なので一瞬だけサイズをチェックしてお店を出たのでした。
宇宙人ジョーンズ先生も言っていた。「この惑星で急にイタリア人になるのはムリがある」と..
END
【さよならルノー・スポール】
私が愛してやまない「ルノー・スポール」は、EU圏の気候変動対策による「2035年EV化法案」の流れから、今後一切の内燃エンジン車両を開発せず、歴史に幕を下ろすことが既に公式発表されています。
電力は無尽蔵に使える地球に優しいクリーンエネルギーなのかと毒づきたくなりますが、世界中の有識者による見解で仕方ないことなのでしょう。
これまで長くルノー・スポールを乗り継いできた私は意図せず、車齢10年超えの史上最も小さなルノー・スポール「トゥインゴ R.S. シャシーカップ」の最終モデルの所有者の一人になってしまいました。
軽自動車クラスのボディに時代を逆行する過給機無しのブン回し系1.6L・16V自然吸気エンジンを搭載、トゥトゥが踏めるタイトな3ペダルレイアウト、もっと回せ!と悪魔のようにささやくフジツボの快音、めちゃくちゃ硬い足周り、セーフティ電子デバイスは皆無で走ること以外の快適装備はゼロ..
なんか書き出すと大変そうですが、走り出してしまえばそんな大変なことではありません。所詮ペース車両はEU圏のお買い物用コンパクトカーなのですから。
次の車検はまだ4カ月先ですが、いつの日か免許証をお上に返上する時、未来のオーナーさんへ最良のコンディションで引き継いでもらうため、3回目の交換となるタイベル・ウオポン・プーリーを発注しました。
自分の考え方と異なる人々と仲良く暮らすため、地球に優しいカーボンオフセットとして、これまでもこれからも、私ひとりで荷物がない時の移動手段は徒歩かジョグ・自転車で済ませたいと思います。
私の半生でこれまで知るかぎり、すべてのスポーツにおいて軽さは絶対的正義です。
END
【デローザ・ヌーボクラシコ】
江戸川沿いの青空カフェで美しすぎる旧いイタリアの名車・クロモリ製デローザに乗ったロマンスグレーのシブい初老の紳士サイクリストにシビレました。
塩むすびを手にした私と目が合い軽く会釈をされたあと、肩に斜め掛けした可愛いサコッシュからお財布を出して、私と同じ日本茶と塩むすびをオーダーすると私の方をもう一度振り向いて軽くウインク。
光り輝くクラシックなイタリアンバイクとオーナーさんの所作ひとつひとつが美しく上品でカッコいい。私もあんな歳の重ね方をしたい。
帰り道にデローザを取り扱うショップに立ち寄りました。流行りのエアロロードバイクが戦隊モノのおもちゃに見えるほど、落ち着いた雰囲気と圧倒的な存在感、クロモリ製フレームは一生モノと言われます。
速さや軽さを追い求めることから距離を置く、人生の円熟期を迎えるオトナの乗り物。
人生最期の一台はデローザのヌーボクラシコにカンパニョーロで組もうかな..と思いを巡らせながら帰宅後に愛車を整備する日曜となりました。
END
【プロフィッターはドクター】
土曜はスロージョガー、日曜はマウンテンとロードを隔週で乗り換えるサンデーライダーの私がローディの脚質を語る資格はありません。
一瞬で相手を置き去りにするパンチャーや、峠をヒラヒラと駆け上がるクライマーとは遠くかけ離れ、かと言って淡々と長距離を走り続けることが出来るルーラーでもなく、私はただフツーに自転車に乗ってる人。
そんな私ですが、月に一度はロードバイクをスポーツ機材として、その性能をフルに発揮できる場所へ車載輪行することが信条です。
やがて峠や丘陵地帯へ通う習慣が身につくと、車体と体躯のフィティングが気になりだして、竹製15センチ定規を常に携帯して、自転車の構成パーツを測りながら走るように..
そしてついに身体測定から算出してもらった推奨フィットサイズを自己判断で変更し、元には戻せない不可逆的なコラムカットを決行した結果、たった十数ミリの調整でしたが切った途端に、フォーム、ポジション、サイズ、すべてのバランスが崩れ去ってしまいました。
ステム長、シートポジション、クリート固定位置、ハンドル角度、悩みながら試走と調整を繰り返すドロ沼の日々。人の体は十人十色で、ひとりとして同じカラダの人はいません。
プロフィッターの仕事は医師や理学療法士さんの世界なのだと思い知らされました。
終わりのない楽しい余暇が私の明日へのパワーです。また明日から仕事頑張ろう!
END
【大人の色気】
大人の色気というと短絡的にセクシーと混同する人が多くいますが、セクシーとは単純に肌の露出を大胆に魅せるだけの姿で、大人の色気とは全く異なるものです。
フェラーリF355にあってホンダNSXにないもの。カンパニョーロにあってシマノにないもの。それは大人の色気。私は筋骨隆々の強さではなく、刹那的な弱さ、切なさに惹かれます。
ハブの回転性能と快音。前後で1,700gを切る軽量性。リムをたった21本のスポークで支えるG3組みの美しさ。デザインとは機能と美しさの調和です。
オトナのホビーとして、コレがたったの一桁で手に入るなら、こんなコストパフォーマンスの高い買い物はこの世にありません。一切の後悔なし!
おわり